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'go'と「行く」の概念の違い

ここでは'go'の例を取り上げて説明します。

'go'は中学校1年のとき「行く」と習った単語であり、他の意味はありませんので、この語はもう分かったと思っておられる人が多いのではないでしょうか。それはとんでもない誤解です。日本語の「行く」の使い方と、英語の'go'の使い方が重なり合っているのは、「学校へ行く」(go to school)とか「外国へ行く」(go abroad)あるいは「買い物に行く」(go shopping)など、ごく一部に過ぎず、他の大部分はまったく重なり合わないのです。つまり 'go'には日本語の「行く」では対応できない使い方がほとんどなのです。

日本語の「行く」は原則として人が主語であり、しかも、上の例のように行き先あるいは用向きを言う場合に限られています。ところが英語の 'go'は人だけでなく物や事でも主語とし、また、行き先や用向きに言及することなく使えるのです。例えば、'Oh, my camera went !' (あら、わたしのカメラがない!)'The money went fast.'(お金はたちまちなくなった)、'The light went out.'(電気が消えた)、'Has your headache gone?'(頭痛は治りましたか)のように使います。日本語では主語が人以外のときは「行く」ではなく「なくなる、消える、治る」などと言います。しかし英語では全部 'go' です。「カメラが(どこかへ)行っちゃった」「電気(の明かりがどこかへ)行った」「頭痛は(どこかへ)行ってしまう」と発想するのです。

これを見ますと英語の 'go'には「ものが無くなる」の意味があることが分かります。ですから「貧困は無くさなければならない」は'Poverty must go.'「戦争は廃絶すべきだ」は 'War must go.'「この建物は撤去しなければならない」は 'This building has to go.'「在庫は一掃された」は 'All of the stock went.' と使えるのです。しかし英米人の発想にはこの場合でもすべて「(どこかへ)行く、行ってしまう」です。

'go' にはまた、本来あるべき状態が失われて(どこかへ行ってしまって)、悪い状態になることを言うときにも使われます。「スープがすっかりさめてしまったわ」は 'Soup completely went cold.'ですが、これは温かいスープの本来の美味しさが失われて、いまは冷めて美味しくはない状態にある、の意味です。「お肉がいたんじゃったわ」(The meat went bad.)「彼はアメリカ人みたいになっちゃってるわ」(He's gone American.)「あの人若いのに禿げちゃってるわ」(Young as he is, he went bald.)などの使い方もみな同じです。

英語の 'go' の使い方はこの他にも沢山あります。ちょっと辞書を引いてみてください。 中学校のとき出会った基本単語が使える世界は実に広大なことがおわかりになると思います。 しかし辞書を見たのでは情報量の多さに圧倒されますし、それを読むのは無味乾燥で退屈な作業ですから、 日本実用英語サービスでは、日本人にとっての有用性の観点から項目を取捨選択し、 簡潔な解説を加えながら皆さんの理解の助けになりたいと企画したのです。そ れが『英語の表現力倍増プログラム』です。これは基本動詞編が第三集まであります。

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